『無駄なものが無駄でなくなる瞬間』
沖縄出身在住のアーティスト・儀間朝龍さんは廃棄されたダンボールを材料に、既存のブランドロゴや商品などを模倣したアート作品を作り続けています。
那覇の国際通り商店街は土地柄もあって多国籍な食品が商店に並んでいます。世界各地からやってくる食品は、全てダンボールに梱包さた状態で輸入され、開封されると一箇所に集められ毎日大量に廃棄されます。しかし、よく見ると、そのダンボールは見慣れないロゴや言語がプリントされ海外産特有の発色の良いものが沢山手に入ります。儀間さんは、その廃棄物を沖縄でしか手に入らないマテリアルと考えて創作活動を始めました。
ゴミを集めて、細かく切り刻み、ひたすら貼り付けていく。儀間さんのこの作業は一見、無駄な作業だと感じる人もいるかもしれません。しかし、廃棄される運命にあったものが、手を加えられることで新たな価値を持つことになり、それが既存のブランドロゴを模倣したものの一部として生まれ変わることになるのです。
ダンボールで再構築された、見覚えのあるポップなロゴを目の前にすると、作品の精巧さや美しさに見とれながら、本物のロゴではないことをすぐさま感知し、切り刻まれた時間や時代を感じて、我に返るのです。それは、生産と消費という無意識な行為に常にさらされている私たち自身を作品によって省みるからではないでしょうか。
あなたの廃棄したダンボールが数年後、美術品として手に届いたとしたら、あたなはどのような気持ちになるでしょうか?